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音質を落とさずに音声を切り出す方法

音声の切り口は、印を付けたその瞬間にぴたりと落ちます。どの再生ソフトでも、いつでもです。動画ではそうはいきません。その理由と、たったひとつの本当の落とし穴、そしてその対処を書きます。

音声の切り出しを開く 再生しながら残したい場所に印を付けます。印の付いた分が1つのファイルになって、指定どおりの位置で切れて戻ってきます。

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短い答え

音声の切り出しを開き、録音をドロップし、IとOで残したい部分に印を付けて(いくつでも構いません)、書き出します。切り口は印を付けたその標本にぴたりと落ち、残した標本は入ったときのまま出てきて、つなぎ目には5ミリ秒のフェードが入るので、プツッと鳴りようがありません。

作業はこれで全部です。このページの残りは、その正確さが宣伝文句ではなく本当だという話と、ふたつの音をつないだときに実際に困ることがひとつだけある、という話です。

動画では無理な正確さが音声では出せる理由

動画は完全な絵の並びとしては保存されていません。それでは大きすぎるからです。ほとんどのコマは隣のコマとの差の記述として保存されていて、単独では展開できません。単独で成り立つのはキーフレームだけで、キーフレームはふつう1秒から10秒に1つ置かれます。コマを写して切り出す道具が好きな場所から始められないのはそのためで、キーフレームから始めるしかないので、切り出した動画が印より1、2秒早く始まることがあります。動画のガイドは、その話がほとんどです。

音にはそれに当たるものがありません。録音は展開してしまえば数字の並びで、1チャンネルにつき毎秒何万個もあり、そのひとつひとつが完全に単独で成り立ちます。1,234,567番目の標本は、1,234,566番目がなくても意味を失いません。ですから切り口はどの標本にでも置けますし、「印を付けたちょうどそこ」は文字どおりの意味です。秒で表した印に標本化周波数を掛け、いちばん近い整数の標本に丸めるだけです。48 kHzなら、その丸めはせいぜい10マイクロ秒です。

再生ソフトによって挙動が変わる心配もありません。切り出した動画は、多くのプレイヤーが尊重し一部が無視する編集用の印に頼っていますが、切り出したWAVは標本そのものなので、プレイヤーが解釈を違えられる余地が残りません。

落とし穴。つなぎ目は不連続です

音声を切るときに実際に困るのがこれで、まともな切り出し道具にその設定がある理由でもあります。

音は波です。ある語の途中から別の語の途中へいきなりつなぐと、前の断片の最後の標本と次の断片の最初の標本のあいだには何の関係もありません。波形は1標本のうちに振れ幅の上端近くから下端近くへ飛ぶことがあります。その飛躍を求められたスピーカーのコーンは、自分に出せるいちばん鋭い音を出します。それがつなぎ目のプツッという音です。

これは音質の劣化とも形式とも関係ありません。まったく劣化のない切り出しでも、まったくきれいな録音でも起こります。不連続とはそういう音がするものだ、というだけのことです。標本ぴったりで切って何もしない道具は、あるつなぎ目では鳴り、別のつなぎ目では鳴りません。両端が波形のどこに当たったかだけで決まります。

5ミリ秒のフェードが本当にしていること

解決は、切り口の直前で音量を無音まで下げ、直後に戻すことです。そうすれば飛ぶべき段差が残りません。ここでいう「フェード」はそれだけのもので、両端の数百標本に当てた傾斜にすぎません。

おもしろいのは長さのほうです。5ミリ秒は48 kHzならおよそ240標本です。コーンが動きを終えるには十分な長さで(プツッという音は完全に消えます)、フェードとして聞き取るにはあまりに短い長さです。5ミリ秒は、子音をひとつ発音する時間のおよそ5分の1です。音量が動くのは分かりません。分かるのは、つなぎ目がきれいだということだけです。

もっと長いフェードも選べるようにしてあるのは、素材によってはそれを欲しがるからです。音楽をつなぐときは20ミリ秒や50ミリ秒に手を伸ばす値打ちがあります。そこで途切れるのは音節ではなく伸ばした音で、いちばん短い傾斜では聞こえるほどのポップが残ることがあるからです。話し声なら5ミリ秒より長く要ることはまずありません。

フェードは、本当に切り口である端にだけ置くべきものです。ある部分が録音のいちばん先頭から始まっているなら、その手前では何も取り除かれていません。ファイルは切り出す前からそこで始まっていたのですから、そこをフェードインさせるのは誰も頼んでいない編集です。ここの道具はつなぎ目のある場所にだけフェードを置きます。だから何も切らなければ、どの標本にも手が触れません。

書き出しのカード。ビット深度のメニュー、ミリ秒単位のフェード長、そして部分・継ぎ目・長さを数えた要約。
フェードは継ぎ目にだけかかります。そこが肝心で、録音の冒頭にかかるフェードは、誰も頼んでいない変更になってしまいます。

MP3を切り出すと、なぜWAVが出てくるのか

MP3もM4AもOggもOpusも開いて切り出せます。返ってくるのはWAVです。これは機能というより取引なので、そのことははっきり書いておきます。

圧縮された音声を切り出す道は2つあります。ひとつは圧縮されたデータをそのまま切り、符号化された枠を展開せずに丸ごと新しいファイルへ移す方法です。ファイルは小さいままで音質も落ちません。ただしMP3の枠は約26ミリ秒あるので、どの切り口もいちばん近い枠の境界に丸められます。キーフレーム問題の音声版です。しかも形式ごとの作業になります。MP3の読み手はOpusのファイルを1つも切れません。

もうひとつは、展開して、標本ぴったりで切って、標本を書き出す方法です。何も丸まらず、ブラウザが再生できる形式はどれも同じように扱え、そもそもフェードが可能になります。展開していない音量に傾斜はかけられません。代償は、標本を何かの形式で書き戻さなければならないことと、ここで使えるMP3やAACのエンコーダーを積んだブラウザがないことです。WAVならエンコーダーは要りません。短い見出しを前に付けた標本そのものなので、その工程では何も失われません。

実際の帰結はこうです。出てくるものは入ったものよりずっと大きく(ステレオなら1分あたりおよそ10メガバイト)、そして元のMP3より良くはなりません。すでに起きた圧縮は取り消せないからです。WAVはどこででも開けますし、MP3が要る相手には、そこからひと手間で作れます。

いくつもの部分をまとめて印す

たいていのオンラインの切り出しは、つまみをひと組だけ渡して、どのひと続きを残すのかと尋ねます。現実の録音では、それは問いが違います。1時間の取材に良い部分がひとつということはありません。散らばって6つあり、それは一度通して聴いて見つけるものです。

ですから聴きながら印を付けてください。部分の始まりでI、終わりでO、何度でも構いません。1組ごとに、時間を直したり並べ替えたりできる行になり、波形の上には帯が描かれます。仕上がりのファイルは、その行を順につないだものです。

同じ印の一覧は、逆の問いにも答えます。消したいのが「えー」や鳴った電話や言い直しなら、そちらに印を付けて「印した所を取り除く」に切り替えてください。印を付けなかった所がつながります。どちらの向きでも印は同じものなので、行き来しながら仕上がりの長さが変わるのを眺められますし、同じ場所に二度印を付ける必要もありません。

印を付けるのは丁寧な仕事で、タブを閉じたくらいで失われてよいものではありません。だから印はただのテキストファイルとして保存でき、読み戻せます。書式は動画カットツールが書くものと同じなので、動画に対して付けた印を、その動画から取り出した音声に落とすこともできますし、その逆もできます。

波形を見てください

再生位置をこすって音に印を付けるのは当て推量ですが、目で見て印を付けるのは違います。無音は無音の形をしていますし、咳は咳の形をしていますし、誰かが話し始める前の4秒の部屋の音は、探すまでもなくすぐ見えます。

これがいちばん効くのは、みんなが少しずつ外す印についてです。文の始まりは、たいてい息継ぎの前の静けさに置きたいものですし、終わりは最後の子音で切るより、部屋の音をひと呼吸ぶん残したいものです。どちらも絵にすれば一目瞭然で、耳だけで当てるのはほとんど無理です。印した部分の端を波形に沿って引っ張れば、少しずつ動かせます。

二か所が印された波形。文と文の間の空白がはっきり見えており、各区間の開始・終了・長さの表が添えられています。
空白は、誰かが話すのをやめたところです。ストップウォッチと違って波形を見る値打ちがあるのは、そこにあります。

切り出しはフェードではなく、編集でもありません

互いに取り違えられがちな3つの言葉です。切り出しは、録音のどの部分が残るかを変えます。フェード、つまり音楽で言う数秒かけるあれは、音量に対する意図的な効果で、上で書いた数ミリ秒はそれではありません。あちらはクリック音の除去で、たまたま同じ計算を使っているだけです。

録音を逆から流したい、速くしたい、音の高さを変えずに遅くしたい、小さく録れてしまったので持ち上げたい。そういうときは音声編集ツールです。デコーダーもWAVの書き出しも同じで、あいだの計算が違うだけです。

これにアップロードが要らない理由

切り出しは配列に対する算数です。デコーダーはブラウザがすでに持っています。<audio>要素でそのファイルを再生しているのと同じものです。そして標本さえ展開できれば、一部を残して残りを落とすのはただの複製です。この説明のどこにも、サーバーのほうが上手にできる工程はありませんし、そこまで往復する時間が作業全体でいちばん遅い部分になります。

それに、これは人が思っているよりアップロードの代償が大きい種類のファイルです。録音とは声です。取材、講義、通話、ボイスメモ、カウンセリング、取っておきたい子どものひとこと。ここの道具にはネットワーク機能が一切なく、ページのContent-Security-Policyには接続してよいアドレスがすべて書かれていて、そのどれもこのサイトのものではありません。

言葉より確認という方は、回線を抜いてから録音を切り出してみてください。ファイルをアップロードしても大丈夫かでは、同じような確認をさらに3つ挙げています。